電磁互換性とは
電磁互換性(EMC)とは、電子機器やシステムが、周囲の電磁環境に適合し、互いに干渉しないように動作することを指します。EMCは2つの要素に分けられます。一つは、発射(Emission)と呼ばれ、機器が放出する電磁波の強さを制限すること。もう一つは、耐性(Immunity)と呼ばれ、機器が外部からの電磁波に対してどれだけ耐えられるかを示すことです。
電磁ノイズとは
電磁ノイズとは、電子機器が発生させる電磁波によって他の機器やシステムに悪影響を及ぼす現象です。電磁ノイズは、コンダクティッドノイズ(伝導ノイズ)とラジエーテッドノイズ(放射ノイズ)に大別されます。コンダクティッドノイズは、電線やケーブルを介して伝播するノイズです。一方、ラジエーテッドノイズは、空間を介して伝播するノイズです。
電磁互換性の規格
電磁互換性に関する国際規格は、国際電気標準会議(IEC: International Electrotechnical Commission)や国際電気通信標準化セクター(ITU-T: International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)などが策定しています。また、各国ごとに独自の規格があり、日本では電波法や電気通信事業法に基づく技術基準が定められています。
電磁ノイズ対策の概要
電磁ノイズ対策は、回路や基板の設計段階から考慮すべき重要な要素です。以下に、主な電磁ノイズ対策を紹介します。
1. シールディング
シールディングは、金属ケースやシールドケーブルなどを用いて、電磁波の侵入や漏洩を防ぐ手法です。これにより、ラジエーテッドノイズを低減することができます。
2. フィルタリング
フィルタリングは、ノイズが混入しがちな電源回路や信号線にフィルタ素子を取り付けることで、コンダクティッドノイズを低減します。一般的なフィルタ素子には、チョークコイルやコンデンサがあります。
3. グラウンディング
適切なグラウンディング設計は、ノイズ対策の基本です。グラウンディングは、電流の流れを制御し、ノイズの影響を最小限に抑えるために行われます。グラウンディング設計のポイントは、インピーダンスの低減やグラウンドループの回避などです。
4. PCBレイアウト
回路基板のレイアウトは、電磁ノイズ対策に大きな影響を与えます。レイアウト設計の際には、信号線や電源線の配置、デカップリングコンデンサの適切な配置などが重要です。
5. 低ノイズ設計
低ノイズ設計は、電磁ノイズを最小限に抑えるために、部品選定や回路設計の段階から考慮されます。低ノイズ設計には、部品の性能や使用環境に適した選択、アナログ回路とデジタル回路の分離などが含まれます。
おわりに
本記事では、電磁互換性(EMC)と電磁ノイズに関する規格と対策を概説しました。回路や基板の設計技術を磨くためには、これらの知識が必要不可欠です。